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股関節について
かずあき鍼灸整骨院です。
今回は股関節(特に変形性股関節症)について私なりの考えを書きたいと思います。
傷んだ股関節
【変形性股関節症とは】
股関節の関節軟骨が摩耗してきて、日常生活で痛みや機能障害(動かしにくさ)が出てくる病気の事です。
世の中には変形性股関節症で困っておられる方は多く(百万人以上)いらっしゃいます。
皆さん股関節に問題はありませんか?
下記の項目で当てはまるものがあるかチェックしてみてください。
【check】
- 爪を切る時やソックスを履くときに股関節が動かしにくい
- 歩き始めなどに股関節に痛みを感じる
- しゃがむ動作がしにくい
- 階段で股関節に痛みを感じる
- 床から立ち上がる際に股関節に痛みを感じる
- 長距離を歩くと股関節が痛くなる
- 股関節を動かしたときに動かしにくさや引っかかりを感じる
- 仰向けに寝た状態で片方の膝を抱えて胸までつけられない etc.
当てはまる項目がある方は、股関節の機能が悪くなっているかもしれません。
放っておいたら、変形性股関節症に進行していくかもしれません…。
【変形性股関節症の原因】
一次性と二次性に分けられます。
- 一次性とは、主に加齢による老化現象や過度な負担が原因で発症するものです。
- 二次性とは、股関節になんらかの病気(先天性股関節脱臼・臼蓋形成不全など)やケガがあり、それが基になって発症するものをいいます。
もともと股関節に問題があると変形性股関節症に移行しやすい
(股関節痛の教科書 齊藤貴志 他 池田書店)
変形性股関節症の原因の80%は二次性によるものと言われています。
要するに元々股関節に何かしらの問題がある方が、40~50代になり筋力や柔軟性などが衰えてきて発症するパターンが多いと思われます。
また、重量物作業(重たい荷物を持ち運ぶ)や激しいスポーツ、肥満なども悪化させる要因といわれております。
【性別による違い】
変形性股関節症は、男性よりも女性の方が圧倒的に多いといわれております。
理由は解明されてはおりませんが、骨盤の形が違うことが要因の一つではないかと言われております。
骨盤の形は男女で違う
(股関節痛の教科書 齊藤貴志 他 池田書店)
女性の骨盤は産道があるため男性よりも横に広がっており、股関節の位置も外側になっています。
関節の位置が、身体の中心を通る重心線から離れれば離れるほど、シーソーと同じで負担も大きくなります。
【変形性股関節症についての私の見解】
変形性股関節症になりやすい方は、もともと臼蓋形成不全(股関節のはまりが浅い状態)などがある場合が多いということでした。
しかし、臼蓋形成不全があれば必ず変形性股関節症になるというわけではなく、防ぐことは可能であると思っております。
実際、臼蓋形成不全の方全員が変形性股関節症になっているわけではありません。
一番の問題は、股関節の軟骨が『こすれる』ような状況が日常で起きていることだと思います。
そのため軟骨が摩耗してすり減っていくのです。
一番の原因は、日々股関節に負担がかかる使い方をしていたり、身体の歪みや柔軟性の低下などであると考えております。
●なぜ股関節で『こすれる』状況になるのか?
まずは股関節の動きや特徴についてのお話をします。
股関節は骨盤と、大腿骨からなる関節です。
一般的に、股関節の動きといえば、骨盤に対して大腿骨が動くことをイメージされるかと思います。
股関節の動き(大腿骨の動き)
(解剖学講義 改訂3版 伊藤 隆 南山堂)
肩関節と同じで、球関節(ボールジョイント)と呼ばれる関節であり、比較的大きな可動範囲を持っています。
しかし、股関節の動きでは軟骨が『こすれやすい』方向があります。
それは、内旋位での屈曲です。
※股関節内旋状態で屈曲をしていくと、90度くらいで股関節の前方は骨と骨とが衝突しやすくなります。
摩擦が起きやすい動き(前方インピンジメントテストとよばれる状態)
(股関節拘縮の評価と運動療法 熊谷 匡晃 運動と医学の出版社)
これは大腿骨の形状が関係しています。
大腿骨には「頚部」とよばれる首のような場所があり、骨盤の関節に対して斜め下からつながっています。
この大腿骨頚部の角度のことを頚体角といいます。
頚体角
(股関節拘縮の評価と運動療法 熊谷 匡晃 運動と医学の出版社)
上記の図の「頚部軸」で大腿骨を動かせば自然な骨運動になります。
それは、膝を胸に近づけるように曲げる動き(屈曲運動)であれば、同時に膝が外に逃げるような動き(大腿骨外旋)です。
頚部軸で動かせば『こすれにくく』安全です。
そのため、 大腿骨が内旋した状態で膝を上げるような動きは、頚部軸で動かせていないため、骨と骨がぶつかってしまいよろしくありません。
(※真っすぐ膝を上げる動きも深くなるとよくありません…)
通常の屈曲は骨同士がぶつかりやすい
(股関節拘縮の評価と運動療法 熊谷 匡晃 運動と医学の出版社)
股関節の動きの特徴がわかった所で次に、股関節がこすれてしまう方の「身体の特徴」をお話したいと思います。
私は、「骨頭の被覆度」や「腰椎骨盤リズム」などが関係しているのではないかと考えています。
①骨頭の被覆度について
股関節の構造は、受け皿である臼蓋(骨盤)に対して、丸い形の大腿骨骨頭がすっぽりとはまる球関節です。
臼蓋とよばれる骨盤の関節面が、球のような形状の大腿骨骨頭に庇(ひさし)のように覆いかぶさっています。
股関節の模式図(S:骨盤、D:大腿骨、F:股関節)
(カパンジー機能解剖学 Ⅱ 下肢 医歯薬出版株式会社)
股関節は、大腿骨や骨盤の動きにより、はまりが浅くなったり深くなったりします。
この臼蓋(骨盤)が骨頭に覆いかぶさる度合いのことを「骨頭の被覆度」といいます。
骨頭被覆度と骨盤傾斜
(運動連鎖~リンクする身体 嶋田 智明 文光堂)
ちなみに、立っている時などは前の方が覆われていません。
(これは四足歩行から二足歩行への進化が影響しているとも言われています。)
股関節の構造的特徴
(運動連鎖~リンクする身体 嶋田 智明 文光堂)
このはまりの深さが股関節の摩擦に大きく関係していると思われます。
はまりが深くなる状態(骨頭被覆度が上がる状態)はどういう時なのかを考えてみます。
下記の図をみてください。
(ちなみに、固定された大腿骨に対して骨盤が動く時も、「股関節の動き」になります。ボルトを動かすのかナットを動かすのかの違いです。)
股関節の動き(骨盤の動き)
(筋骨格系のキネシオロジー 監訳者 嶋田 智明 医歯薬出版株式会社)
はまりが深くなる骨盤の状態は、上記の図の左側3つになります。
- 骨盤が前に倒れた時(骨盤前傾=股関節屈曲)
- 骨盤が横に倒れた時(右に骨盤が倒れると右股関節のはまりが深くなります)
- 骨盤が後ろに回旋した時(右後ろに骨盤が回転すると右股関節のはまりが深くなります)
このような骨盤の状態になってしまう原因は、背骨が関係しています。
背骨は身体を支える大黒柱です。
背骨や仙腸関節が歪むと、身体が傾いたり捻じれたりします。
大黒柱が傾くと重心バランスが崩れてしまい、股関節でもバランスを取ろうとして、上記のような歪んだ骨盤の状態で姿勢が定着してしまいます。
このはまりが深くなった骨盤の状態では、股関節で摩擦が起きやすくなっています。
摩擦が起きやすい状況で、日々しゃがんだり身体を屈めたりすることで、どんどん摩擦が起きて軟骨はすり減っていくことになります。
股関節のはまりが「浅すぎ」ても関節が不安定になりますし、「深すぎ」ても『こすれて』しまうので問題になります。
②腰椎骨盤リズムについて
何かの動作をするときには、必ず隣接する関節も連動して動きます。
これを「運動連鎖」といいます。
特に腰椎と骨盤(股関節)の連動のことを「腰椎骨盤リズム」といいます。
骨盤(股関節)を動かす際は、腰椎も連動して動いているんです。
例えば、前屈動作で考えてみます。
下の図を見てください。
腰椎骨盤リズム
(筋骨格系のキネシオロジー 監訳者 嶋田 智明 医歯薬出版株式会社)
・Aは正常な連動を示しています。
腰椎と骨盤どちらも動いている状態。
・Bは骨盤の動きに制限あり。
骨盤は硬くて動けていないので、腰椎だけで動いている状態です。
※骨盤の動きは、相対的に股関節の動きでもあるので、股関節屈曲制限といえます。
・Cは腰椎の動きに制限あり。
腰椎が動かず、骨盤だけが動いている状態です。
※過度の股関節屈曲の動きです。
このように、どこかに動きにくい関節があれば、連動している近くの関節は動き過ぎないといけなくなります。
動き過ぎないといけない関節は『こすれやすく』なり、摩擦により軟骨もどんどんすり減っていきます。
股関節に負担がかかっている方は、腰椎や仙腸関節などが固まって動きにくくなり、「腰椎骨盤リズム」が崩れている場合が多いと思います。
【最後に】
今回のブログでは、背骨や骨盤(仙腸関節)の問題が、変形性股関節症にとても関係しているということをお伝えしたくて書いてみました。
わかりにくい部分や、お聞きしたいことなどございましたら、当院のLINEなどでお気軽にお問い合わせください。
当院のパーマー系カイロプラクティックでは、背骨や骨盤の歪みを改善する治療が可能です。
それにより、股関節にかかる負担を減らすことができます。
(軟骨の変形自体は元に戻りません。)
背骨の早期治療により、軟骨が変形していくことを防ぎ、痛みのない健康的なお身体を手に入れましょう!
※関節の問題は、関節の治療により改善します。
いくら筋肉の治療しても改善しません。
- 関節の治療の必要性についてはこちらに書いております。